少年は退屈していた。
ここ数日は朝にオウルに起こされこの世界の成り立ちを説明される毎日が続いていた。
興味深い事もあるものの結局は自分の事はいまいち判らず仕舞いなのだ。
「・・・ということになっております、聞いておられますか、主よ」
オウルがため息交じりに言った。
「ごめんなさい」
少年は正直聞いていなかったので肩を落としながらあやまった。
「いえ、主に退屈な思いをさせてしまったのは私の不徳の致す所。どれ、今日は趣向を変えましょう。着いてきてください。」
そう言うとオウルは部屋の扉を開けて廊下にでた。
少年は席を立ち、オウルの後を追った。
二人が何度目かの角を曲がりひとつの部屋に入ると太い柱が何本も立っている広い空間に出た。
「では、始めますか。」
そうオウルが言うと少年から5メートル程離れたところまで歩いていき、少年の方に向き直った。
「どうぞ」
オウルに言われたが少年は何の事だかわからないのでどうぞと言われても動くことができずにいた。
その様子を見たオウルは
「これは失礼をしました。私も少々楽しみにしていたので説明を忘れていました。今日は私と戦っていただきます。」
それだけ説明するとまたオウルはどうぞと言ってきた。
そう急に言われてもどうしていいかわからず少年が固まったままでいると
「ではこちらから参ります」
オウルはそういって少年に向かって間合いを詰め連続で拳を繰り出した。
『・・・これは驚いた。並の者なら拳を出されたことにも気づかず風圧で飛んでいく程度には力を出しているのだが』
オウルはそう思いながらも攻撃を続ける。
確かに少年は腰は引けているもののオウルの攻撃をなんとか凌いでいたのである。
しかし、ジワジワと少年は後ずさり堪らないといったところで上空に飛びのいた。
それをオウルは逃さず少年に向かって大きな翼をはばたかせた。
すると、少年に向かって無数の羽が飛んでいく。
少年が思わず両手を前に突き出すと強い風が起こり、すべての羽の勢いが止まり地上に落ちていった。
しかし、その地上にはオウルの姿は無くなっていた。
「こちらです。」
少年の後ろからなんとも楽しそうな声が聞こえたと思った瞬間強い衝撃を背中に受け、少年は床に激突した。
オウルが蹴り落としたのである。
床には隕石が落下したかのような後が出来ていた。
『しまった。少し力を込めすぎた。』
オウルは慌てて少年の落下位置へと飛んでいった。
中心に近づいたとき瓦礫が宙に舞い上がった。
その瞬間オウルは動けなくなっていた。少年が放っている威圧感にその動きをとめられていたのである。
しかし数秒で少年はパタリと倒れた。
『・・・すばらしい。今はまだ200・・・いや、220といったと所か。しかし覚醒されたら一体どこまで強くなられるのやら。』
オウルは自分の主の強さを分析しつつ、倒れた少年をふわりと抱きかかえると、部屋をあとにした。

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