アイネと少年は訓練を行っていた。
アイネはかなり素早く少年はなかなか捕えられずにいた。
「早く私を捕まえて主様」
少年が肩で呼吸をする中、アイネは本当に楽しそうに逃げ回っていた。
「じゃないと私が捕まえちゃうわよ。」
そう言ってアイネが少年の後ろに回り込み抱きつこうとする。
その気配を感じて少年は振り向きざまにアイネを捕えようとするがその腕は空を切る。
「あーん。惜しかったわね。でもまだまだ。」
「主様今日はこの位にしておきましょうか。私はちょっと出かけてきますね。」
そう言いながらアイネは訓練場を出て行った。
少年は呆気にとられたままアイネを見送った。
『やっぱり男の子の気を引くにはまず胃袋を掴もうかしら』
そう考えながらアイネは城を後にした。

「あんまり普通のものじゃインパクトに欠けるわよねー」
アイネは空を高速で飛びながらブツブツと独り言を言っていた。
「そうだ、確かこの辺に魔法使いの住む街があったはずねぇ。そこにしよっと」
アイネは街に向かって速度を上げた。

アイネが街に着く頃には次の日の朝になっていた。
「やーっと見えたわね。たしかここだと思ったけど。」
アイネはどこから攻めようかと上空からきょろきょろと街を見下ろした。
「いっぱいいるわねぇ。若いお肉の方がおいしそうよねぇ。あら、あそこにいっぱい若い子がいるじゃなーい。」
アイネが降り立ったのは街の学校の校庭だった。
丁度そこでは学校の生徒達が魔法の練習をしていたところで、学生たちは突然の来訪者にざわざわとしている。
「皆さんこんにちは。そしてさようなら。しっかりと怖がってね」
アイネそう言うと学生の内の一人の首を刎ねた。
その様子を見た学生達はバラバラと逃げ出す。
「ん~。なかなかいい匂いがしてきたじゃない。でもまだまだ」
アイネが舌なめずりをしながら逃げていく学生達を見回す。
「それ以上は許さんぞ。」
一人の老人がぶつぶつと呟くと無数の氷の刃が空中に現れアイネに向かって飛ぶ。
その様子を見たアイネはうんざりした様子で溜息をつくとめを閉じた。
老人の放った刃がアイネの体を貫いたと思った瞬間アイネの姿は消えていた。
老人が腹部に違和感を感じ視線を落とすと自分の腹から腕がはえている。いや、背中から貫かれたのだ。
「お爺ちゃんには興味ないのよね~。せめて恐怖の足しになってちょうだい。」
アイネは腕を引き抜くといつのまにか校庭の端に固まっている学生達の方に体を向けた。
「あらあらそんなに固まっちゃって、狩りやすく集まってくれたのかしら」
アイネは恐怖を味あわせるためにゆっくりと学生達に近づいていった。
しかし、なぜかいい『匂い』が先ほどから弱まっている。
学生達の所まで後五メートルといった所でアイネはその原因に気づいた。
「あら、そういうこと。なかなか強い障壁が張ってあるじゃない。これは破るのに
ちょっと時間かかりそうね。子供なのに焦らすのが上手いわねぇ」
学生達はドーム状の薄い膜で包まれており、アイネはその表面を爪でカリカリと引っ掻いた。
その時アイネの後ろから頭の大きさ程の火球が飛んできて直撃した。
「あっつーい。もう、なんなの髪の毛が焦げちゃったじゃない。」
アイネが火球の飛んできた方向に向き直ると一人の女性が次の魔法を撃とうと既に詠唱を始めていた。
「さっきのお爺ちゃんよりは少しは出来るようねぇ。でも・・・」
アイネは更に飛んできた火球を掌でで受けると面倒くさいといった様子で空に向かって弾き飛ばした。
女性はその様子を見て勝ち目がないと思ったのか後ずさりをする。
「あらあら、逃げるくらいなら手を出さなきゃいいのに。でもいいわよ。その恐怖に怯えた顔」
アイネがそういって舌なめずりをした時、一組の男女の剣士が女性とアイネの間に割り込んできた。
「フラム、早く逃げて」
女性剣士が叫ぶとアイネに向かって横なぎに切りかかった。
アイネはその剣を屈んで潜ると回し蹴りを腹部に命中させ、剣士を蹴り飛ばした。
女性剣士は地面を転がりグッタリと動かなくなる。
「あなたはかかってこないのかしら。ああ、レディーファーストってやつなの」
アイネは残った男性剣士に向かって歩いていく。
男性剣士は意を決したようにアイネに剣を振り下ろした。
しかしその剣をアイネが掴むと
「大事な剣なんでしょう。しっかり握ってなさい。」
そう言って剣ごと男性を持ち上げて校舎に向かって投げ飛ばした。
校舎の壁にヒビが入るほど叩き付けられ剣士は気絶した。
「お待たせしちゃったかしら。私の髪に傷をつけてくれたお礼はきっちりしないとね。」
アイネはが再びフラムと呼ばれた女性に近づこうとした時
「姉さん」
アイネの後ろから叫び声が聞こえ、アイネの前に障壁が現れた。
「あら、随分かわいいぼうやが強い障壁を張ってたのねぇ。でもね」
そう言ってアイネが障壁を引っ掻くと簡単に破れてしまった。
それを見た少年は慌てて次の障壁を展開する。
しかし何回出しても難なくアイネに破られてしまいアイネはどんどんとフラムに近づいていく。







TOPページへ  第7章へ  

inserted by FC2 system